If歴史アナキスライヒ

　この文書は1897年8月29日から31日までスイスのバーゼルで行われた第一回シオニスト会議で｢シオン二十四人の長老｣による決議分とされる。
　文書ではユダヤ人が世界を支配し、全ての民をユダヤ教の前に平伏させるという内容を持つ。
　｢シオン賢者｣とは後にシオン血統の専制君主のために「自由、博愛、平等」のスローガンを考案し、フランス革命を起こして、シオンの専制君主が全世界の法王となることを画策した、と解釈される。

　1895年にロシア警察に『ユダヤ教の秘密』という文書が保管されていた。そのなかでは、ユダヤ人はキリストを十字架にかけた時から壮大な陰謀を仕組み、キリスト教を世界に普及させた後でキリスト教をあらゆる手段を用いて破壊することを計画したと書かれていた。
　1902年4月7日、ミカエル・メンシコフがユダヤ賢者による世界支配が3千年間計画されてきたと報じた。メンシコフはある女性から、ニースのユダヤ人倉庫から盗まれた文書であるとして渡されたと証言した。
　歴史家のノーマン・コーンによると、議定書が最初に世に出たのはサンクトペテルブルクの新聞『ルースコエ・ズナーミャ』で、1903年8月26日から9月7日（ユリウス暦)にかけて短縮版が連載され、編集長は反ユダヤ活動家のP.A.クルーシュヴァンだった。
　1903年には議定書がロシアで一般に出版された。同年にはロシア政府がシオニズムを禁止している。

『シオン賢者の議定書』は第一次世界大戦の混乱期に広く流出し、当時からあった国際的な反ユダヤ主義風潮をさらに加速させた。

ロシアではロシア内戦中の黄軍を率いたアレクサンドル・コルチャークの反ユダヤ主義に影響させたと言われており、彼のユダヤ嫌いにも影響した。結果的に全ロシア臨時政府におけるユダヤ人迫害運動はヨーロッパからシベリア鉄道を使って極東方面に逃げるユダヤ人の障害となった。また十一月革命が発生した理由にも白軍左派内部でのユダヤ人問題から発したとも論ぜられ、ロシア内戦の長期化にまで影響した。コルチャーク自身もロシアが不毛な戦争を強いられているのは全てユダヤ人のせいであるとし、個人で反ユダヤ十字軍を設立している。

イギリスではこの文書を英訳した記者が不審死したためこの陰謀論に神秘性を加えた。モーニングポスト紙の編集長も世界の不穏の原因はユダヤ人にあると書いた。また、バルフォア宣言が流出した原因もユダヤ人の手回しがあり、さらにスコットランド独立宣言もロスチャイルド家などの国際ユダヤ資本の援助があったからとし、さらに経済の低迷までもがユダヤ人のせいであるとされた。この影響を受けて、1924年にユダヤ人の参政権を廃止する政治参加規制法が制定された。

ヴェルサイユ革命によってプロパガンダとしてのユダヤ批判が行われていたフランスではこの文書を口実としてさらにこの迫害運動に拍車をかけた。インド・ヨーロッパ語族の中でもとりわけフランス人をアーリア人に最も近い存在であり、優等民族だと主張したジャック・ドリオもアーリア人と対比関係にあるユダヤ人の排斥を正当化した。フランス内戦も第三共和国をユダヤ人が支援しているからだとされ、北部諸都市を中心にユダヤ人迫害運動が行われた。結果的に1925年、ユダヤ人の行動を制限するシオン監視法が制定された。

ドイツ革命が発生しドイツ分裂が起きていたドイツ諸国では、戦争勝利の夢は直前でユダヤ人扇動家による革命で潰え、この背後の一突きにより偉大なるドイツ帝国は崩壊したとされ、ドイツ帝国崩壊の原因はユダヤ人にあるとした。この論はボルシェヴィズムに結び付けられ、バイエルン・レーテに対する北ドイツ諸邦のプロパガンダに用いられた。

戦後のオーストリアでは急進的な改革によって国家が疲弊していた状態であった。こうした状況は、大ドイツ主義達成にはユダヤ人排斥が必要であると主張したヒトラーらナチスの台頭につながり、オーストロ・ファシズム運動の活発化、さらに1925年のシェーンブルン宮殿襲撃事件?によって増大した。

オーストリア＝ハンガリー帝国崩壊後のハンガリーには全ての責任が押し付けられ、三度にもわたる革命によって国家は疲弊した。民衆はこの革命は全てユダヤ人の指示によって行われたものであり、ハンガリー人が苦難を強いられているのユダヤ人がハンガリーを苦しめたからだという思想が広まった。この風潮は矢十字党の主要政策にも採用され、ホルティ政権の足枷となった。